『新SDGs論-現状・歴史そして未来をとらえる』

田中治彦著『新SDGs論-現状・歴史そして未来をとらえる』人言洞、2024年1月刊、2090円

 2030年を目標年としたSDGsは2024年からは後半戦に入る。SDGsの周知度が9割に達した今、SDGsの啓発の時代は終わり、これからはSDGsを具体的に推進する時期に当たる。そのためには、17目標程度の表層的な理解ではなく、それぞれの課題の歴史的な意義と経緯に立ち返って、より深い理解に基づいて行動に移していくことが求められる。

 本書はその副題に「現状・歴史そして未来をとらえる」とあるように、第一部ではSDGsの前身となる地球サミット以来のSDの考え方やMDGs(ミレニアム開発目標)での目標と成果を踏まえて、2024年の「現状」を確認する。特に教育の観点からESD・地球市民教育とSDGsの関連について章を設けている。

 続く第二部では、SDGsの「歴史」について、戦後の4つのグローバル課題との連続性について解説する。具体的には、平和問題、開発問題、環境問題、人権問題である。SDGsの17目標はこれら4つのグローバル課題が重層的に折り重なって成立していることを明らかにする。SDGsは平和問題の観点が弱いので、核と平和について1章を割いている。

 第三部では、2030年以降のグローバル課題がどうなっていくのかについての「未来」を展望する。ここでは、人口、生物多様性、気候変動、貧困・格差問題などの行方を扱う。最終章で、SDGsを「自分事」として捉えるにはどうしたらよいのかを議論する。SDGsは今の地球社会の「変革」を求めていて、「節約・リサイクル」レベルの活動を超えるための方策を探る。

 筆者はこれまでに『SDGsと開発教育』『SDGsと環境教育』『SDGsとまちづくり』『SDGsカリキュラムの創造』(学文社)を刊行してきた。SDGs関連文献は1000冊以上に上るが、2016年刊行の著作は日本で最初のSDGs解説書であった。SDGsの後半戦に向けて、本書により関係者の皆さんが改めて活力と展望を得られることを期待している。

もくじ

第一部 SDGsのルーツを探る
 第1章 SDGsとは何か? 
 第2章 「持続可能な開発」とは何か?
 第3章 ミレニアム開発目標(MDGs)
 第4章 ESD・地球市民教育

第二部 グローバル課題の戦後史
 第5章 戦後4つのグローバル課題
 第6章 南北問題-開発と援助
 第7章 環境問題-公害と熱帯林
 第8章 人権問題-「誰一人取り残さない」
 第9章 東西問題-核と平和

第三部 SDGsの未来
 第10章 2030年以降のグローバル課題
 第11章 SDGsを「自分事」に

SDGs・グローバル課題関連年表

田中治彦(上智大学名誉教授)